さて、いきなり個人的な感想ですが、
僕は常々、樹木って美しいなぁと感じています。
でその美しさとはどういうところにあるのか、について考えてみました。
樹木に関わるプロである以上、しかもそれを美的対象として扱う以上は、ちゃんと説明できないとなぁと、日頃から考えていました。
裏を返せば、これが明確にできると「樹木剪定の美」なんぞについても、はっきりと説明できるようになるのではなかろうかと。
木の美しさというと、四季折々変化する生態学的な美しさや、その成り立ちの根源である細胞組織の組み合わせのような樹木医学的な美しさもあるとは思いますが、今回は樹木の造形的な美しさについて考えました。
というわけで、この記事では、樹木の形状に特化して進めてみます。
結論としては、
「樹木の造形が美しいのはテーパー構造で、かつフラクタル構造を持ち、それに加えてランダム性を内包しているから」
ということになります。
どうでしょう?
以下でそれぞれ説明していきます。
樹木はテーパー構造である。
テーパーとは細長い構造物の径・幅・厚みなどが、先細りになっていることです。釣竿を想像してもらえればわかりやすいかと思います。

樹木は数百キロ、あるいは数トンの巨体を自ら支えるために、地面近くが一番太く、枝先が一番細くなっています。
このテーパー構造によって20mを超えるような木であっても、枝や幹をしなりやすくすることで、風などによって折れることを防いでいるんですね。
地面近くが一番太く、それぞれの別れた枝の先端部が最も細い。
この一貫した形状が見る人を安心させ、風にそよぐ樹木の「テーパー構造の美」だと言えます。
樹木はフラクタル構造である。
フラクタルとは、
フラクタル(仏: fractale, 英: fractal)は、フランスの数学者ブノワ・マンデルブロが導入した幾何学の概念である。ラテン語 fractus から。図形の部分と全体が自己相似(再帰)になっているものなどをいう。
『ウィキペディア(Wikipedia)』より
図形の部分と全体が自己相似、、、難しそうに聞こえます。
ある枝の形をじっくり見ると何となく想像つきそうです。
さっきの桜の写真。ひとつの枝の角度を変えると一本の木に見えませんか?
そう。一本の木には小さな木がたくさんくっついてるんです!
しかも葉っぱの形も皆ほぼ同じです。
引きで見たら一本の木、ズームして見たらたくさんの小さな木。
まさに、木を見て森を見ず…ではなく、
人は木を見ているようで森を見ているのだ。
なんて。
例えば、このロマネスコが美しいかどうかは、意見が分かれるかも知れませんが、誰もがじっと見つめてしまう魅力があると思います。森のようでいて一本の木のようでもある。時には目がくらくらしたりしながら。
この、何となく見つめてしまう魅力、これが樹木の持つ「フラクタル構造の美」だと思います。
また、樹木がフラクタル構造を持っているということは、逆にこうとも言える。
「木は、地球から生えている枝である。」
こう考えると樹木を伐採するときも、地球の枝抜きだということもできる。
また周囲とのバランスを考える必要も出てきそうです。
樹木はそれでいて、ランダムを内包している
テーパー構造で立っていて、フラクタルであるというのは綺麗ではあるけれど、まだそれでは本当の美しさとは言えないかも知れません。
理想的な比率、均整の取れた形というのは、誰もが美しいとは思うけれど、趣に欠けて、近寄りがたさのようなものを感じることがあります。
なんというか、そこには苦労のようなものがない。
樹木と草木の決定的な差異は、何年もかけて肥大生長するという、時間性の有無があります。
何年もかけるということは、必然的に気象条件のランダムな要求を何度も受け入れなくてはいけない。
また、自然の中は全く同じ環境というのは珍しく、そして樹木は一個体では移動することができません。
否応なしに自然の乱れの中に身を委ね、生育していくことになります。
風で傾き、捻れ、突風で折れた枝というのは、その瞬間の出来事を形に変えている訳です。
ある瞬間の時間性を内在していると言っても良い。
樹木はこうして、苦労を重ね、唯一無二の、その場所で、その瞬間しか獲得できなかったような姿形になる。こうした苦労が、思わずはっとしてしまうような、何時間も見とれしまうような魅力になるんだと思います。
極端に変形した「姿」を美しいというわけではないけれど、変形したことにはその理由が必ずあるという「事実」が形状に現れていることに他なりません。
この事実を内包していることが美しいと言えるのだと思います。
ランダムな気象条件に抗った事実を内包している樹木の形は、「ランダム性を内包した美」と言えるだろう。
以上、樹木の形状の美しさは、
・テーパー構造の美
・フラクタル構造の美
・ランダム性を内包した美
で捉えることができる。
というのが現時点での僕の見解です。
また新たなことがわかり次第、報告します。
現場からは以上です!
では。